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コラム

AV新法 のこと ~私見~

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平和ボケのニッポンでは、この5月27日に、「AV出演被害防止・救済法案(通称 AV新法」が日、衆院本会議で全会一致で可決された。今後、参院での審議に移ることになりました。

 もともとは、AV撮影で被害を受けたとする女性を然るべき人権保護団体が救済するという流れで始まった動きが、そのルーツのひとつにあります。また、その中でも未成年者の被害が報告されたことに、成人年齢引き下げによる責任能力論が絡み合うことで、今回の、救済法案が誕生してきたことになります(簡単のために思いっきりショートカットしております)。

最初に、私見としての結論を書いておきます。
・この大事な時期に、この審議は必要?
 ・IPPA等で既に運用されているインナールールを、わざわざ法制化する意味が不明?
 ・それを実行するなら、インナールールに準じていないゾーンの対策を併記しなければ「ザル法」
 ・セックスワーカーに抱くイメージが明らかに実態とずれている。だから、変な立法になる
 ・18歳、19歳の女性を救済すると言うが、そもそも、成人年齢を引き下げたのだから、過保護では?
 ・AV撮影時の本番行為は売春か?とする長年の議論は先送り・・、腰が引けている
 ・AV新法反対派の意見「本番撮影そのものを禁止」も、まさに、現実が見えていないピンボケ発言
 ・結局、何のための立法か分かりにくい。人権を守っていますよ~のアピール?
 ・そもそも、この大事な時期に強引に通すべき法案ですか? あ、参院選対策? なってないと思う。
 ・結局、いわゆる「まじめに「R18作品」を制作している人から見れば「何も変わらない」、これ、結論。

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関連情報

以下、独り言。
よろしければ、お付き合いください。

1.平和ボケ&ピント外れ
  世界を見渡せば、ウクライナでは毎日多くの人間が死傷している、エネルギー問題は深刻、新型コロナ感染拡大は現在進行形の問題、中国関連では香港はどうなった、領土問題はどうなった、そういえば、その後のミャンマーは、・・・などなど、問題山積であります。 
  日本国内だって、報道は激減したけれど感染症問題は進行中だし、円安による影響は個人消費を直撃しているが有効な対策は出ていない、というか、対策を必要としているのかどうかも分からない。岸田首相が選挙戦で訴えた、“新しい資本主義”は、何が新しいのか分からないうちに、さらに内容が変わって、“新・新しい資本主義”になった。まさに意味不明。

 そんな大事な時、しかも国会会期末にあたって、さて、「AV新法」を審議して議会を通過させる意味があるのか、私には、全く理解できません。ま、これが、参議院選挙に効果ありだと考えている層が、少なくとも、権限を持つ層にいるのだろうとは思いますが。


2.「AV新法」の内容を眺めてみる。
   失礼ながら紹介しながら私のつぶやきを書かせていただく。

衆院通過時点で明らかになっている「AV新法」の主な内容は、次のように整理されます。

※出演者に対して性行為を強制してはならない(第3条)
  →法律の建付けでは「性行為=挿入を伴う行為」ですから、強制しなければ、挿入を前提とする出演契約を結ぶことができると解釈できます。公然わいせつでも、ここでの“性行為”という言葉が使われていますから、定義としては同じ。これまで、売春との関連がありAV撮影での挿入行為についてはグレーゾーンとなっていましたが、そういう意味では、ある意味、大きな決定だと言われても仕方ないかもです。もっとも、「国が金銭を対価とする性行為(挿入)」を認めたわけではないとか、そういう説明が出るのでしょうが・・・。

※出演者の年齢・性別にかかわらず、映像の公表から1年間(施行当初は2年間)は無条件・違約金など無しで、契約を解除できる。(第13条)
 →「後の後悔、役に立つかも」というスタンスとなっており、弱者救済的な意味を含んでいるのでしょう。特に、「未成年取り消し権」の効力を残したい層の思惑が見えます。しかしですね、そもそも論として、おかしくないですか? 契約したんですよね。 しかも、撮影から作品公開までには4ヶ月間あって、さらに、公開前の映像も確認できて、そのうえで、1年、2年経過してから契約解除って、一般的なビジネス界で通用しますか?しかも、無条件・違約金無しって。意味不明です。 過保護の極み、まるで、AVに出演するモデルさんは契約書も読めないみたいなことになっていませんか? 結構な数で、インテリジェンスの高い女性モデルさん、存在しておりますよ。

※契約解除の場合、制作・公表者が商品を回収するといった原状回復の義務を負う。(第16条)
加えて、事業者に対しては罰則なども定められ、実効性を高める規定も盛り込まれた。
 →インターネットで動画配信された作品を1年後、2年後に回収することが論理的に不可能であることは既知。こんな、実態からかけ離れた立法、なぜ、書けるのでしょうか? この条項を完璧に遵守できる当事者がいたら会ってみたいです。

※制作・公表者は、契約時に撮影で求められる性行為の内容などを記した書面を渡したり、出演者が特定される可能性などを説明する義務を負う。(第4-6条)
 →これ、当たり前だと思うのですが。この段階を経てからの契約書締結ですので。

※虚偽の説明をおこなったり、契約解除を防ぐため脅した場合、事業者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金を課せられる他、法人の場合は1億円以下の罰金。(第20-22条)
他にも、以下の内容も定められており、出演者を保護する規定がいくつも設けられている。
 →罰則を定めることは結構ですが、これ、実際に運用できますか? 被害にあったとする女性出演者が訴えを起こすことで、この条文は活きるわけですが、そうなると、被害者女性は裁判の場に出て証言することになります? いわゆる二次被害みたいな状況を覚悟のうえで出てきますかね?

※撮影は、契約書などの提供から1か月経過後におこなわれる。(第7条)
作品の公表は撮影から4カ月を経ておこなわれ、撮影後には出演者に映像確認をおこなう必要がある。(第9条)
 →「契約書の締結から」とは書いていないところがグレーゾーンですね。 「こんな感じで撮影しましょう、そうしましょう」というメール交換だけでも、「契約書などの提供」です。また、映像確認のフェーズもあいまいです。まさか、完パケでの確認というわけでもありませんし、複数の演者が参加している場合なんかは、運用できるのか?


最初に、「AV新法」の法案審議が始まった時の状況を見て、まさに、????の連続でした。 

 そもそもは、半煮えの状態で、成人年齢の引き下げを行ったことから事は始まりました。 クレジットカード契約や、通販利用の場面において、やっぱり、「未成年取り消し権」を残そうみたいな議論が出始めて、その過程の中で、「そう言えば、以前、未成年女性がAV出演を強要された」ことがあったよね‥的に、この項目も追加されました。

 その後、この強要問題は、未成年に限ったことではないよね、というわけで、今回の「AV被害者救済」法案につながっているわけです。 そして、おそらく、この問題だけなら、必要かどうかは別として、国会を通過させることは、それほど難しいことではなかったでしょう。
 
 ところが、この法案に反対するグループが出現しました。しかも、その反対とする内容は、ここまでの議論とは少し外れたところにありました。 もっとも、AVという世界では共通しておりますが、ポイントは、『本番行為を伴うAV撮影が問題だ』とするものでした。

 前述のとおり、AV新法においては、“強制しなければ”、性行為を行って撮影しても良いと読めますから、この点に絡んできたわけです。そして、この問題を掘り下げれば、長年続いている AV撮影売春論に巻き込まれてしまい、新法案そのものがハングアップしてしまう可能性もありました。そこで、この点については、2年間の検討継続という、いかにも、国会的な解決を図ったわけです。


それにしても、今の時代で、「性行為(挿入)を伴うAV撮影を法律で禁止しろ」とは、なんとも、ピント外れの論点設定だと思いませんか?

 性行為(挿入)を伴わないセックスシーンのことは、業界用語では、【疑似性行為、疑似セックス】と呼びます。 いかにも、挿入しているようにしながら、実際には挿入していない状態です。 つまり、セックス(挿入)はしていないけれど、セックスを演じているということです。

 かつて、昭和の時代に、「日活ロマンポルノ」とか、「ピンク映画」という世界がありました。家庭用ホームビデオが浸透する前の時代に、セックスシーンを鑑賞しようと考えれば、街の映画館に出かけていくしかありませんでした。そこで、上映されていたのが大人のための映画です。 そして、この時代に上映される映画は、例外なく、「疑似セックス」ということになります。しかも、現代のAVのように、「本当に挿入しているように見せる(高度な)疑似セックスではなく、わかりやすいソレ」。

 当時は、アンダーヘアが映り込んでもアウトでしたから、そこは、絶妙なカメラワークで対応しておりました。例えば、男女の腰が交差する部分には、テーブルの上にある花瓶が被っていたり、脱ぎ捨てたコートが置いてあったり。

 その後、大島渚監督が撮った映画「愛のコリーダ」で、演者が挿入を伴う本番SEXを行ったことで大きな話題になりました。それは、全編セックスシーンで埋め尽くされた、と言ってもいいほどの映画で、日本初の本番行為を伴う撮影、そして無修正での撮影ということで、裁判沙汰にもなりました。

 そう言えば、この頃、「本番女優」なる言葉も生まれました。実際に挿入して撮影する女優さんのことを、わざわざ分けて整理するための言葉です。愛染恭子さんなどが有名でした。

 その流れの中で、家庭用ホームビデオの浸透に合わせて一般化した「アダルトビデオ(AV)」の普及に伴い、グレーゾーンとしての「挿入を伴うセックス映像撮影」が一般化しました。もちろん、当時は、大きなモザイクの先に見える、コンドームの緑色という映像が一般的なものでした。 それでも、当時のAVは購入すれば〇万円単位という高価な商品でしたから、ほとんどのユーザーは、レンタルビデオを利用していました。もちろん、女優さんは高額収入を得られた時代です。

 その後、AVの世界では、より過激な方向に向かっていきます。
 一方では、出演する女性モデルのレベルアップという流れがあり、一方では、撮影方法の変化という流れを確認できます。いずれも、視聴者を獲得するためのビジネス上の流れということになります。

 例えば、演出上では、コンドームを着用しないで性行為を行う「生挿入」が広く行われるようになります。例えば、あるカップル寝取られ系の動画では、男優が生挿入しようとすると、彼女を差し出している男性が、「あ、ゴムは?」と言います。すると、男優が、「あ、今のAVは生挿入なので」と返す場面があります。もちろん、台本ではありますが、そういう時代です。

 生挿入も、当初は、女性の胸に射精するとか、 顔射がひとつのジャンルを作るなどの時代を経て、その後は、「中出し」というスタイルに変遷していきます。いわゆる、生挿入&中出し という形が一般化します。 そして、この頃から、AV撮影現場でのトラブル、強制・強要が報告され、一部は社会問題化しました。生挿入を強要されたとか、いきなりピルを渡されたとか。結局、この時からの流れが、今回の「AV新法」につながっているわけです。

 実際、当時の作品を見ると、その後、人気の単体AV女優になった女性モデルが、普通に、生挿入・中出しをやっておりました。結果、このようなトラブルに対して、2014年頃から、AV業界の中に、自主規制の動きが出始めます。 結果、2017年11月以降に公開されたAV作品は、ほぼ全部が、スキン使用、疑似中出しに取って変わりました。


※複数の専門調査グループ(?)によると、これが最後の「リアル中出し」作品とか。これ以降、ほぼ100%の作品が、「疑似」となっているそうです。
真正中出し 最後
真正本物中出し解禁!!! 枢木あおい


 したがって、現在、大手サイト等で販売されている「中出しと題するAV作品」は、女性モデルを守るための旗のもと、ほぼ100%(アングラ、一部同人AVは別)疑似中出しになっています。

 もっとも、それでも、挿入を伴うセックス(本番)を行っているわけですが、アダルト映像の量産と、違法アップロードにより、メーカーの収益力は以前に比較すれば確実に低下しております。 さらに、海外の無修正サイトもあるわけですから、限られた土俵の中で制作されているAV作品は、まさに、工夫と知恵の集積物です。

 そんな中、「本番撮影を法律で禁止することをAV新法に入れよう」とするグループって、いったい、どういう現状認識なのだろうと考えてしまいます。 きっと、「日本の中から、AVを消去しよう」ということなのだろうと。
実際、この時代に、かつての 日活ロマンポルノ のような映像作品をリリースしたところで、何人が購入するでしょうか。さらに、価格という点では、桁が違います。

 また、AVに出演する女性は暗い影を引きずっているという設定にも無理があります。どうしても、出演女性を被害者と結び付けたがる習性がありますが、それは明らかに誤解です。もちろん、そういう事例はあるのでしょう。しかし、全体から見れば、極端なレアケースです。 この事実は、多くのAV女優さんが発言しております。

 法律というものは、できるだけ多くの人々に公平でなければいけませんし、そのためには、立法に関わる方々は、専門知識を持つ人の意見を聞いて理解する能力が必要です。特に、参議院議員はそうです。本来、スペシャリストの集団が参議院議員です。

 AV新法は、今まさに、参議院での審議に入っております。ここは、一部の被害者とする出演女性だけに注目することなく、もっと多くの出演者、制作関係者、販売に関わる人々のことまでを俯瞰して、然るべき修正を加えるなり、参議院としての仕事をして欲しいと考えております。

長文、失礼しました。

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